目次へ戻る

 

猪瀬直樹氏の挫折

2004318

宇佐美 保

 

 最近の猪瀬直樹氏をテレビ画面で見ていると、猪瀬氏を気の毒に思い、且つ、日本の闇を痛く感じます。

 

道路関係四公団民営化推進委員会の発足時は、猪瀬氏の発言に道路族は怒りの声を上げ、猪瀬氏自身はスタンガンで、ご自身の身を守っていたのに、今では、猪瀬氏の発言に対して道路族の誰一人として怒りの声を上げません。

 

評論家の桜井よしこ氏が常々発言しているように、“政府・与党案に対する古賀学氏の喜びの表情を見れば、猪瀬氏がなんと言おうと、道路公団の民営化は「道路族」の思いとおりになってしまったかがはっきり判る”という事だと思います。

 

 この37日のサンデープロジェクトにての「猪瀬氏に問う!!道路公団民営化法案の是非」での猪瀬直樹氏と前原誠司(民主党「次の内閣」ネクスト外務大臣)氏との対論での猪瀬氏は惨めでした。

 

 前原氏の発言は誠に理に適っていました。

 

1) 民営化推進委員会の答申は評価するけど、政府案は2010点というよりマイナス点だ!

2)道路建設の抑制の必要性から民営化案が出てきたのであり、その根拠に、借金(と資産)と利益のバラン スを考えずには新たな道路の建設は出来ない点にあった

3)政府案では、民間会社は利益を上げず道路を造り続けるシステムが残っている!

4)民間会社の利益の源泉は、サービスエリア、パーキングエリアのみ

 

そして、番組コメンテーターの松原聡氏東洋大学教授)の次の発言も納得できます。

田中氏達が辞めたのは、新しく出来る民営会社が、道路建設に関してどの程度自主性があるかがポイントであったのに、民営会社は道路を持っていないのだから、民営会社に道路を造るか造らないの判断が出来ない。

(最初の案は、道路保有会社と運営会社とを10年後に合体させる事がポイントだった。)

 

事実、前原氏の指摘のように、民営化推進委員会の発足時は、「道路族」は、高速道路の新規着工が出来なくなると大騒ぎしていたはずです。

ところが、猪瀬氏は、“そんな事はあったかしら?!”と云った風情で、次のように語っていました。

 

 私は、特殊法人問題を調査している内に、道路公団改革の必要性を痛感し、20018月に小泉首相に提案したのが事の始まりであった。

そして、道路公団の民営化のポイントは、次の3点である。

1)料金を下げる

2)地域分割

3)借金の返済

 

 なんだか、こんな提案だったら、わざわざ民営化する必要など無いのではないのでしょうか?

 

 なにしろ、猪瀬氏は、これまでの成果を次のように掲げているのですから尚更です。

 

道路を造るか否かは国会の問題である。

私が調査したデータを国土交通省にぶっつけて交通需要の見通しを変え、又、残りの2,000キロの道路建設費を20兆円から10兆円と半分にした。

 

 この猪瀬発言に対する、次の前原氏は、当を得ています。

 

“それは民営化したからではない。国土交通省が、これからの2,000kmをコスト削減でこうすると云っているだけ。”

 

 更に酷い発言を次のように猪瀬氏はしていました。

 

僕は是非前原さんに確認してもらいたいんだけど、例えば第2名神の抜本的見直し区間(ここだけの工事費が1兆円)は、「凍結」だと国会で確認していただきたい。

(何故なら、大臣とか国土交通省は「凍結」という言葉を嫌がりますので。)

もう一つは、7.5兆円(1,300km)の有料道路事業(会社)以外の、新直轄方式(税金)による不採算路線の3兆円(700km)分は毎年毎年の単年度予算なので、民主党が政権をとったら止めればいいのです

そうすればこの分が浮きます。

 

 これに対して、前原氏は次のように反論しました。

 

見直し区間は2,000kmの中のたった100kmちょっとでしかない、それなのに、国土交通省の資料では9,342kmの整備区間は全体の81%であって道半ば、つまりは11,520kmを造るといっている

 

 そして、また、猪瀬氏は次のように前原氏に依頼しました。

 

11,520kmは国会決議なので国会決議を外すように前原さんにお願いしたい、そして、11,520kmは止めて貰いたい。

9,342km11,520kmも出来るだけ短くしたいのは僕の気持ちで、これらは民主党が頑張れば出来る事です

 

 私には、何故1,300km分が着工されてしまうのか判りません。

それよりも何よりも驚いたのは、“大臣とか国土交通省は「凍結」という言葉を嫌がります”と発言したり、もっと驚くのは、前原氏に国会での確認を依頼している事です。
と云う事は、前原氏が国会で確認しないで、このままの状態では「見直し区間は凍結されない」事態に陥るおそれがある(と云うより「凍結されない」)と猪瀬氏は自覚しているのだと推測します。

 そして、更なる驚きは、民主党が政権を取ったら不採算路線は止める事が出来ると発言し、国会決議である
11,520kmも止めて欲しいと前原氏に依頼している事です。

 

 こんな事なら、猪瀬氏は、道路関係四公団民営化推進委員会等を発足させずに、「自民党を倒して、民主党に政権交代させよう」の運動を起こした方が良かったのです

 

 こんな状態になってまでも、猪瀬氏が”政府の道路公団民営化案は十分に評価出来る”と言い繕い続ける事は、「道路族」を喜ばせるだけではありませんか!?

それよりも猪瀬氏はここで一旦、敗北を認めるべきではありませんか!?

 

 そして、猪瀬氏の初心を努力を無惨に粉砕し、又、猪瀬氏と同じく特殊法人問題を洗っていた石井紘基議員の命を奪った日本の黒い霧を暴く事に新たな力を注いだら如何なものでしょうか?!

目次へ戻る